天空の蜂

恵比寿への通勤時間は良い読書に時間となった。
分厚い文庫もどんどん読み進む。


今回読み終えたのは、東野圭吾著「天空の蜂」

天空の蜂 (講談社文庫)

天空の蜂 (講談社文庫)


この本は、ライター仲間のS木ちゃんのお勧め本。
2月、用賀での選手名鑑作りの作業中に教えてもらった。
その後、古本屋で探したけど見つからない。
丁度、「白夜行」のドラマがヒットし、「容疑者Xの献身」が直木賞を受賞ということで知名度がグンとアップしていたから尚更だろう。


で、この「天空の蜂」は渋谷のツタヤで見つけたんで即購入し、その日から読み始めた。


元エンジニアの著者らしく、専門分野での描写がリアルだ。
そして、原発の存在意義という問いかけと、現代における日本国民の意識。
それだけではなく、いじめにも焦点を向けているあたり。
相変わらず東野ワールドが広がっている。


巻末の解説を読みつつ、いつも思うのだが、この東野圭吾という人間は何故にこうも人の心をえぐるのだろうか?
人が生活していく中で、痛いことや、自分がするには嫌な事、できれば現実を見ないですごしたい事。
そうったものを題材にして物語を組み立てている。


でも、そうした人が心の奥底に隠している、ちょっとした疑問や疑念を題材に質得るからこそ、世間の反応が大きいのだろう。
普段から、CMなどで電気の節電は呼びかけられている。
しかし、それを実践している人数はごくごく一部の人たちだけだ。


以前、ある仕事の関係で大手電力会社に行った。
真夏だった。
建物に入り驚いた。
空調は抑えられていて、天井の蛍光灯は半分が外されていて消えている。
クールビズ」「チーム・マイナス6% 」を実践してた。


まあ、生活の中で多少は気をつけてTVの電源や、PCの電気をこまめに消したりはしても、クソ熱い猛暑の中、我慢してまでエアコンの設定を抑えたなんて記憶がない。


そうした個人の心の隙というか、弱さを題材にされた訳だ。


何故、原発は地方に建てられるのか?
何故、原発を悪と決め付けるのか?
何故、原発の存在を知ろうとしないのか?
何故・・・・


その何故について深く深く踏み込んでいる。
そして、切なくもその何故に答えるために事件を起こした犯人が居る。


何故、原発を動かすのか?
多大な電力が必要だから。
何故、地方に建てるのか?
大都市ではもしものときに大きな犠牲者が出る可能性があるから。
では、何故原発建設に反対する人が居るのか?
当事者にしか判らない問題や理由がある。


その何故に答えるために、犯人は新型ヘリを原発の上に落とそうと考えた。
もし落ちたとしても、安全だと犯人自らが自信を持っている原発の上に。


でも、何故そうした行為でしか警告を投げかけれなかったのか?


間違ってヘリに乗り込んでしまった子供の命の大切さと比較して、原発破壊=甚大な被害者が出るという物語。


「天空の蜂」とともに、とある人から頂いたメールを含め、日本国という虚像の上に立つ国が抱えている大きな矛盾の上で、今の生活が成り立っている。
そうしたことに気がついた本だった。