光原百合著「十八の夏」

先日も書いたけど、今回は光原さんの作品。
この作家さんは初めて読む。

十八の夏

十八の夏


この本は4編の短編からなる。


十八の夏
ささやかな奇跡
兄貴の純情
イノセント・デイズ


短編集はあまり好きではないんだけど、光原さんの作品はどれもテンポが良くポンポンと読み終えてしまい気がつけば1冊が終わっていた感じ。
あと、どの作品にも花が関係していてとても知性的な印象を受けた。
(巻末のまとめで、これは編集者のアイデアと書かれていた)


amazonなどの評価ではやはり表題の「十八の夏」が一番人気のようだが、実は僕は「ささやかな奇跡」に惹かれた。
主人公と恋人が書店勤めという設定も関係したのかもしれないが、実に細かい部分までの描写がリアルで素直に読めて感動した。
手書きのポップや、レジ袋を断る行為など、その最たるところ。


余談だが、事実、大概の出版関係者は書店が本にするカバーや、手提げの袋を断ることが多い。
なぜならば、その原価を知っているから。
そして、書店が1冊の本を売って得る利益の薄さを知っているから。
だから、自分が同業者の店で買い物をするときには本当に必要だと感じなければ当然の様に断るのである。


話を元に戻して。
「十八の夏」の本は全編、ミステリーとは呼びにくいものがあるが軽い引っかけと、ふんわりと不思議な雰囲気にさせてくれる読み物だった。
それが作者の個性であると感じるのは1編目の数行を読めば判ることである。
ここちの良い感じの筋肉痛と似ているような気がする。