鳩笛草

宮部みゆきさんの「鳩笛草」を読みました。


鳩笛草 (カッパ・ノベルス)

鳩笛草 (カッパ・ノベルス)


この本は「クロスファイア」を先に読んだんだけど、その巻末に紹介されていた本。
だから、読んで見たかった。
ちなみにこの本は「朽ちてゆくまで」「燔祭」「鳩笛草」の中編小説からなる。


ちなみに「クロスファイア」の主人公である青田淳子がこの事件を起こすまでのお話しが「燔祭」となっている。
後から読んでみるとこのときは主人公としては出てないし、本人も全く出てこないけどなかなかどうして。
いい雰囲気を出している。
この存在感が、後に「クロスファイア」として独り立ちした。


他の2編も人情味溢れる内容でした。
特に「鳩笛草」はだれもが一度は欲しいと思う「人の心を読む力」を持っている。
あの人は自分の事を好きだろうか?
その人はもしかしたら嘘をついているのかも?
この持ち主は誰だろう?
とかね。誰もが一度は思うでしょ。


でも、その能力は必ずしも幸せな結果だけでは無いことを知る。
必要以上に流れ込む感情に悩むこともある。
そして、その能力を上手く使えるようになったとしても・・・
その能力が費えるとき。
何か重要な体の一部を失う。
それは不幸なことなのか。幸運なことなのか。
そんな事を考えさせられた話。


「朽ちてゆくまで」は、ちょっとタッチが違ったミステリー。
自分の能力の事を知らない主人公が、ふとした事から昔自分がある能力を持っていたことを知る。
そして、その能力が故に両親が共に亡くなったのではないかという憶測をしてしまう。
本当の理由を知ること。
自分で調べて気づいてしまうことに不安と後悔の念を感じる。
死と生への葛藤。
両親と祖母の願い。
生きる事の大切さ。
そうしたものを上手く表現している。


今更ながらだが、宮部みゆきさんはSFという切り口から生と死をテーマにした内容が多いように感じる。
善と悪。生と死。
こうした身近な問題を上手く物語に盛り込んで、読者を誘導する。
是か非か選択を迫られる人間模様。
だから結局、謎を読み解きながら人生を読み解くことになる。